人は生きていれば日常的に何度も嘘をついてしまうものです。自分にとって都合の良い嘘、相手のためを思ってついてしまう嘘、そして利己的な目的を果たすために悪意をもってつく嘘など、その形はさまざま。ただ、「嘘も方便」という言葉がある通り、嘘つくこと全てが悪いとは断言できず、他者との円滑なコミュニケーションを図るためや、物事を進めていくうえで必要になる嘘も存在するため、接する相手や状況によっては正しいアプローチの仕方ともいえるでしょう。
しかし、自分の本音と向き合って正直な気持ちで企業と関わっていく就活においては、些細な嘘がときとして深刻な問題を引き起こす場合もあります。

 

 

就活では簡単に嘘がつけてしまう

 

本稿を読む皆さんは、今までどんな嘘をついてきたか記憶しているでしょうか?
実は嘘をつく能力は、誰しも子供の頃から備わっているものであり、発達心理学の観点でいうと個人差はあれど2歳~4歳の時期ですでに嘘をつくことを理解し始めるのです。
無断でお菓子を食べても親に詰められたときに「食べてない」としたり、オモチャを散らかして片付けるように言われても「もう終わった・あとでやる」など、練度が足りていないためにすぐにバレてしまうような、その場しのぎの嘘をついてしまう。
皆さんも幼い頃を思い出してみると、こういった経験が何度もおありではないでしょうか?

 

ただ、こうした些細でユーモラスな嘘ならば大勢に影響が無くとも、家庭環境に問題があって親の愛情が十分に受けられていないと、自己愛の精神(心理的な防衛本能)が異常に発達してしまい、自らをケガや病気に陥らせて周囲の注目を引こうとする恐れもあります。
有名なものでいうと「ミュンヒハウゼン症候群」という精神疾患ですね。ホラー映画『着信アリ』でも、他者を傷つけてしまう「代理ミュンヒハウゼン症候群」が取り上げられていたので、心理学に疎(うと)い人でももしかしたら名前だけは聞いたことがあるかもしれません。

 

【ついて良い嘘と悪い嘘がある】

ただ、ご存じの通り、嘘には大きく分けて「プラスに働く嘘(ホワイト・ライ)」と「マイナスに働く嘘(ブラック・ライ)」の2つが含まれます。
前者は社交辞令で相手の気持ちを尊重して発せられる嘘に該当するため、人間関係を良好に保つためには欠かせないものに位置づけられます。
しかし、後者の場合は相手を陥れる、あるいは自分本位で行われる偽証にあたるので、発した嘘が大きな問題を引き起こしてしまうケースも往々にしてよくあるのです。

 

たとえば、恋人や伴侶を裏切って別の異性と関係を持ったり、マルチ商法に誘導して相手から多額の金銭を搾取し、金銭的精神的なダメージを与えてしまう事態、最悪の場合は個人や企業に損害賠償が発生するのは『ブラック・ライ(嘘)』になるでしょう。
少し例が極端でピンとこないかもしれませんが、他にも前もって取り決めていたスケジュールを前日や当日でキャンセルしたり、初対面の人を紹介する際に、ありもしないデタラメエピソードを並べて相手の自尊心を著しく傷つけてしまえば、これもブラック・ライだといえますね。
ただ、ブラック・ライをついてしまって信頼関係に軋轢が生じてしまったとしても、きちんと誠意をもって謝罪をすればたいていの人は許してくれるでしょう。
しかし、甚大な影響を及ぼすような嘘を習慣的についてしまえば言うまでもなく信頼を取り戻すことは叶わなくなります。

 

【嘘つき大会と揶揄される就活】

よく就活生の間では就活市場を「嘘つき大会」だと囁く光景が見られます。現に、企業に提出するESや履歴書の記載事項にて、過去に体験したエピソードを“盛ったり”、第一志望である企業を相手取った面接選考では、「御社の〇〇という理念に共感し~」といった心にも思っていない綺麗ごとを並べて、評価を下す相手の“ご機嫌取り”に必死になる人も毎年ウンザリするほど現れるものです。
もちろん、面接官役を担う企業の人事担当者は数多くの人材のスキルや人となりを見極め、発信された情報を取捨選択することに長けているプロなので、こういった嘘は見抜かれています。
ですが、企業からの好印象欲しさに、未だ就活準備や選考対策で嘘をつくことを止めない人は減る気配がありません。
それはなぜかというと、本当にその語った内容に嘘偽りがないかを企業が確かめることができないからです。

 

考えてみれば分かるのですが、地元のアルバイト先でどういう活躍をして、結果的に周囲を巻き込んでどういう成果を得たのかを知らされても、企業はいちいちその真相をアルバイト先に問うのでしょうか? それだけの確認にしても企業は時間や人手を消費してしまうので、まずありません。
そう、就活生が仮に嘘をついていたとしても、情報が本人の談のみになれば裏付けが取れないだけでなく、数多の応募者を審査する立場上、余計なコストを割くわけにもいかないので、就活生は簡単に企業に嘘をつけてしまうのです。
嘘を見抜くことに自信があるなら、語り手の表情や仕草、内容の妥当性・整合性を加味して判断できるのでしょうが、人手不足で余裕の無い企業だとそうも言ってられません。

嘘をつくと、どんな失敗が生まれるのか

 

嘘をつく大きな要因は「責任を逃れたい」という考えや、「実力以上の自分を見せたい」という虚栄心が根本を占めます。
ただ、前述にもあるように嘘をつくこと自体は自衛やコミュニケーションの観点で間違いとはいえませんが、その頻度を誤ったり内容に見境が無くなってしまえば、“嘘をつく行為”そのものが習慣になっていくでしょう。
そうなれば、虚言癖が染みついてしまって発言に責任を持つことができなくなってしまいます。

 

虚言癖は病名ではなく、あくまで俗称(オオカミ少年ともいいますね)なのですが、“癖”と言われるだけあって非常にやっかいな存在です。
嘘をついた本人には嘘をついたという自覚が薄く、気づいた人がいくら指摘したところで改善の効果を期待できません。
そればかりか、当該者は自分の意見を否定されたと思い込んで、より過激な嘘を並べて周囲を混乱させる恐れも無きにしも非ずです。
そこまではいかないにしろ、学生時代から嘘で自分を守ることが当たり前になっている人だと、入社した後で仮病を頻繁に起こして欠勤が続く、さらに業務上の過失が発覚した後も知らぬ存ぜぬを決め込んだり、あるいは隠蔽に走ったり同僚に責任をなすりつけてしまう可能性も大いに考えられるでしょう。

飾らないありのままの自分で勝負

 

自分のことをよく知らない人を相手にするからこそ、虚勢を張って自分を大きく見せて優位に立ちたがる。その気持ちはよく分かります。
ただ、企業にとって必要な人材かどうかを書類・面接で判断する就活において、その考え方は何も生みませんし、むしろ下手に背伸びしたことで後々の自分の首を絞める結果に繋がるでしょう。
どんな形であれ、自分の能力や働くことへの意欲的な姿勢について嘘をついてしまえば、相手に新卒としての素養を期待させることになり、入社してからマルチタスク(複数の業務)を任されたり職場の空気に流されて自分の性格と真逆の対応に追われるかもしれません。

 

まだ大手企業ならば人数も多いためにそのあたりは寛容……、かもしれませんが、人手が少ない代わりにそれぞれがスペシャリスト級の能力を求められるベンチャー企業では、嘘が明らかになって雇用契約の見直しが図られる場合も。
そうならないために、カッコつけたい気持ちを抑えて、企業に自身の等身大の姿を見せるようにしてください。
「他の就活生に見劣りして不採用になるかも」と臆病になるかもしれませんが、嘘をついて得た内定だと将来的に思わぬトラブルを招く恐れがあるため、リスクヘッジのつもりで正々堂々と勝負を挑みましょう。

 

 

まとめ

就活の選考が差し迫り、少しでも良い印象を与えるために経歴や能力面で嘘をついてしまう人は多いですが、下手気に嘘をついてしまえば、相手に新卒入社させることに不安感を抱かせるきっかけになるので気をつけましょう。
就活で相手の信頼を掴むには、自分を飾ることなく真摯な姿勢で物事に臨むことが一番ですよ!