「就活では学生の個性を見たい!」。年々、採用活動をする企業間でそう囁かれながらも、同じ服装、同じような髪型で、誰しもが就活に臨むことを強いられる現在の学生就活市場。ネットや各メディアでは、学生達がリクルートスーツに身を包み説明会やらセミナーやらに参加する様子を「葬式」と揶揄されるほどであり、その没個性的な姿を見る誰もが変革を望んだことでしょう。

そんな就活の在り方に疑問を呈し、一石を投じた存在が『#令和の就活ヘアをもっと自由に』と声を上げたパンテーンです。

令和以降の就活ヘアの自由化を掲げ、多くの企業や若者達の注目や賛同を集めたわけですが、この取り組みを機に、凝り固まった就活への見方が大きく覆るかもしれません。

(ライター:まくれでぃ)

 

パンテーンによって就活の在り方が覆った

 

P&Gが展開する、1945年誕生の大人気ヘアケアブランド『パンテーン』が2019年9月23日に打ち出した「# 令和の就活ヘアをもっと自由に」という一大プロジェクト。

交通広告(新宿駅・渋谷駅・東京駅・梅田駅)やWEBムービー、そしてテレビCMでも公開され、就活の手法や固定観念について疑問を抱く大勢の心を鷲掴みにしましたね。

数多くのヘアケア商品を世に送り出し、学業や労働、介護に恋愛と忙しい毎日を過ごす多くの女性の髪を守ってきたパンテーンですが、令和初の内定式を目前に控えたタイミングで、自由な就活ヘアの推奨だけでなく従来の髪型・髪色問題を広告という形で切り込んだわけです。

 

 

 

 

動画内では就活を終えて内定式を迎えた新卒達が就活ヘアについて、採用活動を行う企業に向けて素直な気持ちを発信しています。

たった60秒ほどの短いアプローチながら、就活生に重くのしかかる「就活のみだしなみ」の是非についてメスを入れたパンテーン発のこの動画は、改めて身だしなみの意味と、個性の理解について考えさせられるきっかけとなりました。

企業の印象に残るために、皆と同じ髪型(ひっつめ髪)にしたり、自毛が明るいと黒染めしたりと、就活生ならではの悩みをキャッチアップし、「令和以降の就活ヘアをもっと自由にしていこう!」というヘアケアブランドらしい試みが印象的です。

 

このプロジェクトはパンテーンだけでなく、就活ヘアの自由化に共感した139もの企業の賛同によって実施され、令和初の内定式を転換期として就活生の個性尊重を応援する姿勢を露わにしました。

実際のところ、一部の企業では学生の個性を見るのを目的としながらも、服装と髪型の統一によって各人の本質が見えてこないという苦悩もあったわけですが、こうして企業同士が協調して就活の手法に待ったを掛けるのは、まさに類を見ない先進的かつ革新的な出来事といえるでしょう。

賛同企業を見ても『DeNA』、『HONDA』、『RICOH』など、理美容、化粧品とは全く異なる業界にもかかわらず就活ヘアに異を唱えているため、今後の就活への期待を持たざるを得ませんね。

 

昨年10月、そう平成最後となる内定式前後で「# Hair We Go さぁ、この髪でいこう。」キャンペーンを開始したことで就活ヘアの変化を促してきたパンテーン。当時は就活生たちの“髪にまつわる”正直な気持ちを取り上げた「# 1000人の就活生のホンネ」プロジェクトにおいて、就活生達が心に秘めていたヘアースタイル・ヘアカラーへの本音を探り、現代の学生がありのままの姿で前向きに就活するために取り組みを行っていました。

このキャンペーン内では日本全国で調査を実施し、19歳~29歳までの男女就活生を対象とするだけでなく、なんと新卒採用活動を行う企業の人事担当者200人にまでアンケートを取り、就活ヘアに関する企業の本音をオープンにしたのです。

 

▼企業人事もホンネでは悩んでいる-個性の見方と認め方-

 

学生の声では、1334人の学生のうち8割ほどが「企業の求める人物像に合わせて自分を偽った経験がある」「就活での身だしなみ(髪型・髪色含む)に不満を抱いている」とし、学生を評価する立場である人事担当者は「面接や内定式での服装や髪は評価に影響しない」に半数以上が肯定的なコメントを示し、「自社の面接において服装や髪で個性を出すのに賛成か?」でも賛成派が約7割を記録しました。

この導き出された結果からも、学生のみならず企業の内部でも就活の身だしなみ、主に髪型について変化を望んでいることが分かるでしょう。

 

▼平成最後の年で就活ルールが撤廃

 

そもそも、日本の就活事情は一昔前から学生達の間でネガティブな印象を受けていました。

就活の目的は「自分にマッチした企業の内定を得て、より良い社会人生活を実現すること」であり、その過程では能力だけでなく“人となり・自分らしさ”をマナーや身だしなみで表現することが求めます。

要するに“学生の個性”でポテンシャルや仕事に対する意欲的な姿勢を判断するわけですね。

ただ、昨年10月に国内の大手企業の多くが加盟する経団連が就活ルールの廃止を発表。

これによって、採用計画の見直しが行われ、企業の採用活動スケジュールが将来的に通年へと切り替わるとされています。

もちろん就活のスケジューリングが変貌するということで、大学側も就活生の学力低下を危ぶむようになり、学生達からも就活のさらなる早期化によって学業との並行だけでなく開始するタイミングを掴みづらくなるなどの懸念点が浮かび上がりました。

 

そうは言うものの、未だに就活は凝り固まったルールでがんじがらめ状態であり、就活を開始する時期は3月に広報が解禁、6月に選考が解禁とスケジュールが固定されていて、これまでと大きく変わったような風潮は出ていません。

就活ルールが経団連から政府主導に移り変わったといっても、学生の混乱を避けるためにしばらくは現行スケジュールで実施されます。

 

▼新卒採用によって生まれた“弊害”

 

結局、「新卒一括採用」という日本独自の採用活動計画が、大手をはじめとする企業群で根深く浸透しているからであり、キャリア採用とは違って何の実務経験もスキルもない学生を多大なコストを投資して採用するために、学生当人は身だしなみの徹底で好印象を与えて勝負するのは変わりません。

そのため、就活を経験した学生達から「同じような服に髪型でどう個性を出せばいいんだ」「皆が似たアピールしかできないのに相手が本来の自分を理解できるはずがない」と、不満を漏らすこともしばしば……。そして出来上がったのが「量産型就活生」です。人によっては『スターウォーズ』さながらのクローン兵のようにも思えるでしょう。

 

本来、自分の憧れる・興味のある企業の採用試験を受けて前向きな気持ちで将来と向き合うはずの就活が、「就活生なんだから髪や服はこうあるべき!」という保守的な固定観念に縛られて、企業の選び方も自己表現の仕方も大人達によって敷かれたレール上で行うようになったわけです。

その結果、地毛が黒ではなく茶色寄りであれば黒染めしなければならない。長髪が好きだったのに就活を迎えたら後ろは留めて前髪はカットしなければならないなど、自分らしさを出すべき場のはずなのに、その自分らしさを自らの手で失う羽目になってしまいました。

「黒髪の方が清潔感がある」や「就活生なら服や髪を統一して社会への順応性を示すべき」といった、前時代的な考え方が今の就活市場を支配しているのが背景にあり、そのせいで就活生は没個性だの画一的だのレッテルを貼られがちです。

 

選考を通して企業から選ばれる立場なので、スーツの着用や言葉遣いなどのビジネスマナーは致し方ないといっても、身体の一部である髪だけは自由に整えたいですよね。

特に女性にとっては髪型や髪色は非常にデリケートな問題。なのに就活という行事によって自身のこだわりを諦めなければならない、言葉通り身を削って就活に励まなければ相手から「意欲的で信頼できる」と評価されにくいわけです。

 

人材の多様性を重視する今こそ、髪にも彩りを!

 

就活ルールが撤廃され、徐々にですが企業も通年採用を導入。さらにAIやRPAといったIT技術の浸透から働き方改革の推進など、ここ数年で就活の風景のみならず仕事の在り方も変化していきました。

人材不足が問題視されているため能力至上主義に傾倒したり、終身雇用制が崩壊したことで高齢者の再雇用が検討されたりと、人材の多様化も全く珍しい話ではなくなったわけです。

ただ、こうして働き方に変化が生じてきているならば、就活生の髪型や髪色を前例に則って限定する必要はないのではないでしょうか?

せっかく学生時代の貴重な時間を割いて、自己分析や企業分析などの準備を重ねて就活に前向きに取り組もうとしているのに、入社を強く希望する会社を見つけたとしても他の就活生達と同じような恰好で挑まなければ良い印象を得られない、といった仕組みは淘汰するべきものです。

就活で危ぶまれる雇用のミスマッチを極限までに避けたいならば、髪型への偏見を無くして就活生に柔軟かつポジティブに就活を行える選択肢を与えるべきだと考えます。

 

もちろん、入社後に組織の秩序を著しく乱すような不穏分子を排除するために、順応性の乏しい学生を外見で取捨選択したいというリスクヘッジは大いに理解できます。

ですが、髪や服装を就活生の意思に関係なく統一させたことで、応募者のポテンシャルを十分に引き出せない、画一化された外見によって各々の差別化が図れないという人事の声が出ている以上、就活ヘアに制限をもたらすことで必ずしも優秀な学生を確保できるとは断言できないはずです。

そういう意味では、パンテーンと「# 令和の就活ヘアをもっと自由に」キャンペーンに賛同した139の企業はまさに、江戸幕府終焉のきっかけとなった風雲児「坂本龍馬」のような存在だといえるでしょう。

30年にも及ぶ平成の間でも就活に関するいくつもの変遷がありましたが、令和元年を迎えた今年からは就活生の姿や企業の採用視点がどう変化していくのか楽しみですね!

まとめ

 

就活生と多くの企業では、まだ身だしなみへのイメージや価値観のギャップが生じており、まだまだ解決には時間が掛かりそうですが、パンテーンのような名のある企業が大々的に就活ヘアの必要性に疑問を投げかけてくれたことで、令和の就活は従来よりも“とっつきやすい”ものになりそうです。

就活ルールも撤廃されて、21卒以降の就活がどうなるかも気掛かりですが、記事冒頭での動画のように、今後は自分らしい髪型や髪色で勝負できる環境に整ってくれることを期待しましょう。