日本には美術系の大学が90校程度あり、入学する学生の割合も年々増加の傾向にあります。アート系のスキルや知識を培っていく特徴故に、在籍している男女比も圧倒的に女性が多いのも印象的ですね。ですが昔から言われているのが、美術大卒は就職が過酷という点です。なぜそう囁かれるようになったのでしょうか、そして具体的な進路先とはどんなものがあるのかを今回は紹介していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生数は増加中でもなぜ美大卒は就活が難しいのか

 

 

 

 

1980年代のデータでは約5000人ほどで男女比も男性側が過半数を占めていた美術大界隈ですが、30年経過した2010年以降ですと学生数は14000人にも膨れ上がっているだけでなく、女性の美術大生の方が上回る形となりました。少子高齢化社会と言われて久しい現在、60歳以上の人口数が年々増え続け、それに反比例するように若年層の数が乏しいのが実情ですが、毎年美術大生の数は不思議と伸び続けているのです。その理由としてはやはり、一昔前とは違ってメディアを通して様々なアートに触れる機会や意識が変化していき、ITテクノロジーの躍進と普及によって日本のみならず海外層にも注目されやすい土壌へ進化したのが大きいかと思います。

モダンアートだけでなく、近年ではアニメやゲームといったもののデザインにメイキングなど、美術系の技能が活かされやすいので、卒業したばかりの若者からキャリアのある年齢層までセンスがあれば、幅広く活躍出来るのがこの界隈の特徴といえます。

 

 

 

 

そして就活事情についてですが、美大生の卒業後の進路では就職を決める者ももちろんおりますが、中には非正規で仕事に従事する者や別の学校へ進学する者と様々です。ただ今も昔もよく言われているのが“美術大は就活が厳しい”という話。現在プロとして現場で業務に励んでいる人でも「最初の内はなかなかアートでは喰っていけなかった」と聞かれます。というのも名前は挙げませんが在籍している学校によって就職率には大きくバラつきがあり、有名校では真面目に研鑽を重ねて課題をクリアしていった学生の就職率は80%以上となかなかの高水準ですが、場所によっては就職率が年々低めというのも見かけます。

そしてアートという古来より人々に愛されるテーマを学び、それで生きていく事を理想とする人が多いわけですが、現実問題これがなかなかシビア。傾向として美術系は就職出来たとしても朝昼晩関係なく働かされてしまいがち。一般的には映像系や広告代理店などがその側面が目立ちます。そんなブラック気味な環境故に、せっかく就職出来ても自分の思い描いていた美術系の理想を見失い、心が折れるというパターンも珍しくありません。これらは学生時代に専攻していたコースと進路によって違ってきますから「美術系=ブラック」と一概には言えません。しかしどの職種でも経済的な余裕が無かったり、過酷な業務が常態化していたりと苦労話が絶えません。

ただ美術系の仕事だろうと一般的な仕事だろうと“使い捨てにされない良い人材”として優遇されるにはまず手に職つけるか、客観的に見て腕とセンスに自信が持てるくらいのポートフォリオを用意しておく必要があります。実際油絵だったり建築にデザインだったりと活躍の場は違っても学生の時分でポートフォリオを充実させておけば就職でも優位に立ちやすいです。

 

 

 

 

という感じで美術大の卒業後の過酷な面について触れていきましたが、この界隈は就職の種類(バラエティー)が豊かという特徴もあります。二次元的・三次元的なデザインなど各分野によって必要とする知識は変わっていきますが、その過程で学ぶ“基礎力”に大きな違いは無いので、デザイナーや講師としてアートを教える予備校にアーティストと幅広く用意されています。また企業に社員として固定で勤務する以外にもフリーランスとして独立する人も多く、後者では国内だけでなく海外でも実力を発揮して個展を開き成功するというケースもテレビや雑誌でも見かけます。

 

 

主な就職先ってどんなものがあるの?

 

 

 

 

先ほども語った事ですが美術系の仕事には色々な形があり、“THE アート系”として働くものや広告関係で編集や印刷にプロデュースに携わるものと、活躍の場が狭いというわけではありません。ただやはり美術系は文字通りクリエイターとしての色が濃いので、今後も継続して働くとなると時代の流行に合わせたニーズや新たな技術や情報を柔軟に吸収していく姿勢がとても重要になってきますよ。ここから先は、美大卒の一般的な就職先について解説していきましょう。

 

広告代理店

 

紙やネット媒体問わず顧客から依頼された広告の企画や制作を手掛けていく仕事です。デザイナーとしてのセンスは無論必須ですが、クライアントと円滑に話を進めるためのコミュニケーション能力、企画を固めるための論理的思考力が求められます。クライアントの希望によって企画やデザインの仕様に差が出るので、飽きが来づらいというのが特徴的ですよ。広告代理店と聞くと激務で忙殺されるとネガティブな見方をされがちですが、中小から大手まで数多くの企業が存在しているので、経験を積んでいくフィールドが多いです。そして近年では大手でも労働時間などにチェックが入るようになり、残業についても厳しく取り締まるようになりました。

 

デザイン事務所・メーカー(デザイン職)

 

上記の広告代理店勤務と同じく、柔軟な思考力に加え自由度の高い発想力が必要になります。こちらでは各企業によって違うデザイン業務(企画やデザインの設計に造形)を手掛けます。デザイン事務所では所属する事務所によって受ける仕事は様々。アーティストとして手掛けるグラフィックからWebデザインなどを専門とする場所や、インテリアまでも担当する場所と色々あり、自分が得意とする事務所へ応募しましょう。ただこれら事務所は軒並み少人数制であり、全国には数多くのデザイン事務所があれど、大手でも所属しているのはたった30人程度がほとんど。そのため新人でも業務を多く回していく事になり、デザイナー志望にとって人気職となる分“やりがい”を押し付けるブラックな一面を垣間見やすいです。

事務所勤務の他にメーカーなどの企業内で働く「インハウスデザイナー」もあり、制作会社のデザイナーとは違って受託業務でなく、自社の商品のデザインを手掛けて時には企業のイベントのアイテムデザインも行うなどと、“企業の専門デザイナー”として動く事も可能です。

 

建築業界・インテリア系会社

 

こちらは主に建築学科を学んだ美大生の進路となります。建築設計やハウスメーカーにゼネコンと就職先は多く、“設計”一つをとっても商業施設や住宅に公園などの設計などデザイナーとして幅広く活躍出来ます。他にも部屋の空間を彩るインテリア系も見どころです。こちらではインテリアデザインにディスプレイ会社、家具メーカーや工房と建築に勝るとも劣らない幅広さが自慢です。

 

ゲーム業界

 

近年の学生に人気なのがイラストやCG制作の技術が活かせるゲーム制作会社。ゲームの制作にはプランナーやプログラマーと様々な仕事が関わるものですが、デザイナーですと作品の根本となるキャラのメイキングや背景に、ゲームのコンセプトアートにUI(ユーザーインターフェース)まで多くの業務を手掛けていきます。デザインにおける発想力だけでなくて、制作にまつわるシステム構築の知識も求められます。ただこちらはデザイナー単体の勤務というよりは、制作に関わる人間がチームとして動くのが特徴的です。

 

 

働いた後のギャップを減らすためにインターンへ

 

 

 

 

クリエイティブな業務が主となる美術大卒の進路。ただ一般的な他の学生と同じように早い段階から仕事への理解を深めていく事が大切となります。特に美術大生は授業内だと“自分のやりたい事、主張したい事を作品を通して表現する”のに対して、企業勤めなりフリーランスなりと働いていく場合は“企業が求めているものを把握してそれを忠実に表現する”事が肝となっていきます。

この考え方の違い(ギャップ)を社会人になりたての状態から味わうと、ただでさえ過酷な労働環境ですので一気に心が擦り減り、自分が求めている働き方を見失ってしまいます。そんな懸念を少しでも多く省くために、学生の内からデザイナーインターンシップへ参加してみましょう。最前線で働く現役のプロデザイナーの働き方を間近で見てみると、学校で学んだ事以外で何が足りていなかったのかがスムーズに理解出来ます。ご存知の通りインターンシップにはあらゆる形が存在しますが、この場合は実務を体験出来る長期インターン(1ヶ月以上)を選択しましょう。ただデザイナーインターンは他の企業の長期インターンとは違って、無給で行うものがほとんどとなりますので、アルバイトと並行して行わないと継続していくのは厳しいです。もちろん企業によってデザイナーインターンでも給料が発生するものもあるので自分のニーズに合わせて選んでいきましょう。

 

まとめ

 

 

 

 

世間的にはまだまだネガティブな印象を抱かれやすい美術大生の就活事情。ただ「美術大だから」と一括りにするには早計であり、デザイナー職だけ見ても活躍出来る場に差もあり、実力を確立していけばフリーランスとして動き、Webでも紙でも売れっ子として活躍出来る可能性もあります。まずは自分の理想の働き方を練り直し、インターンでプロの姿を見ながら実務に励んで、就活で最大の武器となるポートフォリオの作成に活かしていきましょう。